
今回は、「Blenderでベイクがうまくできない」という方に向けて、スカルプトで作成した高精細な表面ディテール(鱗やしわなど)をノーマルマップとしてベイクする際に発生しやすい問題と、その簡単な解決法をご紹介します。
◆「Blenderでベイクできない」よくある問題とは?
Blenderでスカルプトモデリングをしていると、ブラシで作り込んだ凹凸やディテールを、後からノーマルマップやディスプレイスメントマップとしてLowポリモデルにベイクしたくなる場面がありますよね。
ところがこのベイク作業、意外とトラブルが多く、私も次のような問題に悩まされました:
- ノーマルマップが破綻している(ノイズや黒いシミが出る)
- スカルプトで彫り込んだ細部が反映されない
- 表面が部分的に潰れてしまう

上の画像のLowポリでベイクして生成したノーマルマップ

◆ベイクできない原因は「モデルの重なり」にあり
今回私がスカルプトしたのは、ドラゴン風のモンスター。鱗を1枚1枚ブラシで丁寧に彫り込み、非常に細かいHighポリモデルを作成しました。
そして、Retopo(リトポロジー)して作ったLowポリモデルにUV展開を施し、いざベイク…という段階でトラブルが発生。
原因を調べた結果わかったのは、
LowポリモデルがHighポリモデルの内側にめり込んでいた
という単純かつ見落としがちな理由でした。
ベイク処理では、Lowポリモデルの面がHighポリモデルの表面情報をサンプリングしてノーマルマップなどに焼き付けます。その際、LowポリがHighポリに密着しすぎていると、情報の取得に失敗することがあります。
◆対処法:「Alt + S」でLowポリを少し膨らませる!
ここで効果を発揮したのが、**「Alt + S」**によるモデルの拡張です。
▼具体的な操作手順:
- Lowポリモデルを選択
- 編集モードまたはオブジェクトモードで「Alt + S」を押す
- マウスを少し動かして、ほんのわずかに外側へ膨らませる
これにより、LowポリがHighポリよりわずかに外側に位置するようになります。結果として、ベイク時にディテールの取りこぼしや欠けがなくなり、きれいにノーマルマップへ反映されました。
注意点としては、「膨らませすぎない」こと。ディテールとの位置ズレが生じてしまう可能性があるため、目視ではほとんどわからないレベルで調整するのがベストです。

◆ベイク成功後の変化
この調整を行ったあと、再びベイクを試したところ:
- ノーマルマップのノイズや潰れが解消
- 彫り込んだ鱗や細部が正確に反映
- ベイク時間もスムーズに完了
と、非常に良好な結果になりました。
「Blenderでベイクできない」と感じていた問題が、モデルの位置関係を見直すだけで解決できるとは驚きでした。

◆補足:ベイク時にチェックすべき他の項目
今回のようにAlt + Sで解決できるケースも多いですが、他にも以下の点はあらかじめチェックしておきましょう:
- UVが重なっていないか(非重複が基本)
- オブジェクトのスケールを適用しているか(Ctrl + A)
- ベイクマージンが適切か(デフォルト4px、必要に応じて調整)
- 法線の向きが正しいか(反転しているとエラーの原因に)
◆まとめ:「Blenderでベイクできない」ときはモデルの重なりを疑おう!
もしあなたが今、
- スカルプトの凹凸がノーマルマップに反映されない
- ベイクが途中で破綻する
- 「Blender ベイク できない」で検索してここにたどり着いた
のであれば、まずはLowポリモデルの位置関係を確認してみてください。そして、Alt + Sでほんの少し外側に膨らませてから再ベイクしてみましょう。
このちょっとした工夫で、ベイクの品質が大幅に向上する可能性があります。
余談
◆今回のモデル制作での反省点

今回のベイク作業を通じてうまくいったこともありましたが、同時にいくつか反省点も見えてきました。
● 鱗テクスチャの解像度が低かった
スカルプトで作成した鱗のディテールをノーマルマップにベイクしたあと、全体にテクスチャを貼り付けて仕上げたのですが、使用したテクスチャ画像の解像度が低く、拡大表示した際にぼやけて見えてしまう箇所がありました。
特にアップのカットや近距離レンダリング時には粗が目立つため、今後は以下の点を改善したいと感じました
- より高解像度のテクスチャ素材を用意する
- 必要に応じて手描きでディテールを補完する
- テクスチャ解像度に見合ったUVマッピングを行う
● Lowポリモデルをデシメートで作った影響
今回、作業の効率化のためにHighポリモデルからDecimate(デシメート)モディファイアを使ってLowポリを生成したのですが、その結果としてポリゴン構造が均一でなく、影が不自然にくっきりしてしまう箇所が発生しました。
具体的には、斜めにポリゴンが走っている部分でシャープなエッジが出たり、ライティングで意図しないコントラストが生じたりしました。
今後の改善点としては
- リトポロジー(Retopo)によって、流れに沿ったクリーンなトポロジーを作る
- 少なくとも顔や体の目立つ部分は手動で整える
- ノーマルの自動スムージングを適切に設定する(例:Auto SmoothやWeighted Normalsの活用)
もし今後、同じような制作フローでモデルを作る予定の方がいれば、今回の経験が少しでも参考になれば幸いです。
参考
参考動画
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